Nintendo SwitchのパンフはめくっていってTEAM NACSのページで変な声が出た。任天堂ハードの広告とかゲーマーにとってそれ以上が思いつかないレベルのアガリ。SMAPとか嵐レベル……。
昨今の高橋一生ブームに、WOWOWで録画してある第三舞台の『深呼吸する惑星』でも観返そうかなあ……あのときの高橋一生さんは心底すばらしかったけど、第三舞台オタの皆さんにはどんな感じで迎えられてたのかな……と思っていろいろ検索したところ流れ流れて表題の件を書くことにしました。
『深呼吸する惑星』はかなり賛否両論あった芝居で、ベテラン俳優陣へ辛い記事に当たったりします。自分じゃないのに胸が痛くなる。いやアレは脚本演出の問題でツートップが悪いわけではないんですよ。とソウルジェムを浄化するため朝日2014の記事を読み始めました。イェイ! 大高&小須田至高ゥゥゥ!!!
そしたら、「TEAM NACSを見てると第三舞台を思い出す」「男5人だし『朝日のような夕日をつれて』やればいいのに」といった声をちらほらお見かけしたのです。
それ、近いものを観ました。1995年6月2日-4日に上演されたイナダ組『NO FUN』です。
安田顕さん以外のNACSの4人(森崎博之さん、戸次重幸さん、大泉洋さん、音尾琢真さん、あとの2人は清水友陽さんと川井"J"竜輔さん)が参加したこの男ばかり6人の芝居は、第三舞台へのオマージュに溢れたものでした。第三舞台のいろんな芝居のいろんな場面が次々と使われていき、当時の自分がものすごく第三舞台に傾倒していた時期だったが故に、終わってみたらもうその第三舞台をなぞった部分しか覚えていなかった。だめじゃん。
印象深いのは『朝日のような夕日をつれて』終盤、「神が存在しないなら神を創造しなければならない」で終わるパントマイムの部分の丸パク、いやオマージュ。セリフもまるまる一緒だったかは自信ない。それと大泉さんのダルマです。
この絵で伝わりますでしょうか……。絵が描けないのって、辛いですね……。小須田康人さんがダルマ(宝塚のようなレビューでよく見る、レオタードに派手な羽とかつけたやつ)の格好で「♪命短し 恋せよ……って、止めてよー!」と黒澤明監督『生きる』のシーンをブランコこぐ真似しながらボケるシーンを、大泉さんが丸パク、いやまるまるオマージュしたんです。本当のことを言えば、格好までダルマだったかも自信ない。私の脳内には小須田さんがいたので、もう大泉さんも完全にダルマで脳内再生されてしまう。もしダルマじゃなかったとしても脳内ダルマ余裕なほどに大泉さんの「止めてよー!」が甘えた小須田さんの台詞回しを完璧になぞったものだった。
当時、『NO FUN』を観てしばらくは怒ってました。「北海道の観客が知らないからってパクリまくるなんて!」と。同行した友人がその後に演劇の道を進んでしまうくらいに面白い芝居だったからこそ悔しかった。その友人はのちに第三舞台の映像を観て「かっこいいと思ったところがことごとくパクりだった! 騙された!!」と怒ってました。2007年に再演してるんだよなあ。どういう内容になってたのか気になる。
同じ頃に"TPS"という演劇団体が札幌で立ち上がったのも良くなかった。その名前、かのデヴィット・ルヴォーのTPTと何か関係あるの!? と思うじゃん。ないのよ。全然なかったのよ。それが北海道演劇財団というなんだか大きそうな団体が鳴り物入りで立ち上げた*1ものだったので、「マジでセンスねーな! 『パチスロおそ松くん』ってタイトルで六つ子に個性つけちゃうくらい元ネタへの敬意ゼロだな!!!」となおさら憤ってた。ごめん今の憤り方は2017年だった。それほど10代の私は札幌の演劇シーンにガッカリしてしまったのです。TPSって今になって考えると多分えらいひとたちとかにお金を出させて芝居で食ってく仕組みをうまいこと作ったようにも見えるので、30代の私はむしろその剛腕に感心したりします。
このころ「札幌ドームのニックネームは『HIROBA』に決まりました!」(誰一人として徹頭徹尾使ってない)「新しいサッカーチームの名前は、道産子を逆から読んでオーレってイタリア語っぽくしてみた!」(定着したしサガン鳥栖みたいな熱い面白チーム名フォロワーをうっかり生み出す根源になってしまった)などが連発してて、北海道のネーミングセンスに絶望してたこともほっこり思い出しました。
いま思えば「みんな第三舞台は遠征なりビデオなりで知識あるよね?」というのが前提だったのかもしれないなあ。第三舞台のいた小劇場ブームも「つかこうへい芝居はみんな観てるよね?」が前提だったのだろうし。
TPSの話じゃないですけど、小劇場ブームを見ていてなんとかならないのかなあと思ってたのは「この人たちこんなに面白いけどちゃんと食っていけてるのかな」という点で、役者がテレビに進出したりすると安心したりもするけど、あまりに出世すると舞台に立たなくなっちゃう。NACSのすごいところは、水曜どうでしょうという化け物番組の恩恵を受けたとはいえ、この「ちゃんと食っていけてほしい」「舞台を辞めないでほしい、贅沢を言えば有名人の客演はなしで定期的に公演してほしい」という小劇場界で相反する願いを成就させた稀有な成功例なところだと思うのです。
大泉洋が小須田康人の完コピとか、きっと私以外にも「俺得だろ!?」と立ち上がる人が何人もいるじゃないよ。だいたい森崎さんが一番最初に作った芝居のタイトルが『CHAIR〜立ち続けることは苦しいから〜』だし、初期のNACSは第三舞台の影響受けまくってたし、「影響受けまくってました!」と清々しく鴻上尚史さんに告白してた対談もあったし、NACSさんは義務としていつか朝日をやるべき。
*1:現在は"札幌座"に名を変えています